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このページは 2007 年 07 月 17 日 21時46分58秒 に更新したキャッシュ情報です。

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始めとは?

[ 79] スタートアップの始め方
[引用サイト]  http://www.aoky.net/articles/paul_graham/start.htm

成功するスタートアップを作るには3つのことが必要になる。優れた人たちと始めること、顧客が実際に欲しがるものを作ること、可能な限りわずかの金しか使わないこと。失敗するスタートアップのほとんどは、これらのうちのどれかをやり損ねたために失敗している。この3つをちゃんとやったスタートアップはたぶん成功するだろう。
そしてこれは、考えてみればわくわくさせられることだ。何しろ3つとも実行可能なことだからだ。困難ではあるが、実行可能だ。そしてスタートアップが成功すれば、創業者は通常金持ちになる。それはつまり金持ちになるということもまた、実行可能ということだ。困難ではあるが、実行可能なのだ。
スタートアップについて伝えたいメッセージが1つあるとしたら、これがそうだ。スタートアップには解決に天才を要するような魔術的で困難な部分というのは何もない。
中でも、スタートアップを始めるときにすごいアイデアは必要ない。スタートアップが収入を得るのは、人々に現在あるのより優れたテクノロジーを提供することによってだ。しかし人々が現在手にしているものは時に相当ひどいものであり、それを改善するのにとりわけすごいことが必要になるわけではない。
たとえばGoogleのプランというのは、単に最低でない検索サイトを作るということだった。彼らは新しいアイデアを3つ持っていた:
Webのより多くの部分をインデックス付けすること、検索結果の順位付けにリンクを使うこと、キーワードに対応した邪魔にならない広告のあるシンプルですっきりしたWebページにすることだ。使えるサイトを作るということに何よりこだわっていた。Googleの内側にはすごい技術的な工夫があるだろうことは間違いないが、しかし全体的なプランということで言えば単純そのものだ。彼らは今ではもっと大きな野望を抱いていることだろうが、この単純なことが年間何十億ドルという収入をもたらしているのだ。[1]
Google以前の検索のように旧態依然としている領域はたくさんある。私はスタートアップのアイデアを生成するヒューリスティクスをいくつか考え出せるが、その多くは1つのことに帰着する。何か人々がやろうとしていることに着目し、それを最低じゃないやり方でする方法を考え出す、ということだ。
たとえば現在の出会い系サイトはGoogle以前の検索より遥かにひどいものだ。それらのサイトはみんな同じ単細胞なモデルを採用している。実世界でのデートがどういうものかという方向からアプローチするのでなく、データベースのマッチングの仕方からアプローチしているように見える。大学生が授業の課題として作ったとしてももっとマシなものができそうだ。しかもそこには多くの金が投資されているのだ。出会い系サービスは現在でも価値あるビジネスとなっているが、それがちゃんと機能するようになれば、何百倍もの価値を持つようになるだろう。
スタートアップにとって、アイデアというのはほんの始まりに過ぎない。スタートアップ創業者になりたいと思っている人の多くは、スタートアップを作るプロセス全体の鍵となるのは最初のアイデアであり、そのあとはただ実行するだけだと思っている。ベンチャーキャピタリストはもう少しものがわかっている。あなたがすばらしいアイデアを手にVCに行って、機密保持契約にサインするならそのアイデアについて話そうと言うなら、VCの多くはとっとと消えろと言うだろう。これは単なるアイデアの価値がどれほどのものかを示している。アイデアの市場価値というのはNDAにサインする面倒よりも低いのだ。
初期のアイデアの価値がどれほど小さいかを示すもう一つの証拠として、途中でプランを変えるスタートアップがいかに多いかということがある。Microsoftの元々のプランは、よりにもよってプログラミング言語を売って儲けるということだった。彼らの現在のビジネスモデルが現れたのは、5年後になってIBMが彼らの目の前にそれを落としてくれたときだ。
スタートアップのアイデアには確かに何某かの価値があるが、問題は、それが伝達可能でないということだ。それはあなたが誰かに実施するようにと手渡せるようなものではないのだ。アイデアに価値があるのは、主として出発点としてだ。疑問を持った人がそれについて考え続けることで価値が生まれる。
重要なのはアイデアではなく、そのアイデアを持っている人々だ。優れた人々はまずいアイデアを修正することができるが、いいアイデアがまずい人々を救うことはできない
これは別な言語に翻訳するのは難しいだろうと思うが、アメリカにいる人ならみんな私の言っている意味がわかると思う。これはその人が自分の仕事を度が過ぎて真剣にやるということだ。自分の仕事をあまりにうまくやり、プロフェッショナルを通り越して強迫的なほどになるということだ。
具体的にどういうことを意味するかは、仕事によって変わる。営業であれば、ノーという答を決して受け取ろうとしないような人だ。ハッカーであれば、コードにバグが残った状態でベッドに行くくらいなら朝の4時まででも起きているような人だ。広報であれば、自分の携帯でニューヨークタイムズの記者に売込みの電話をかけるような人だ。グラフィックデザイナなら、何かがしかるべき位置から2ミリずれていると肉体的苦痛を感じるような人だ。
私たちのところで働いていた人たちはみんな、自分の領域に関してそういう動物だった。営業担当の女性はあまりにしつこく、電話相手の潜在顧客が気の毒になったくらいだ。彼らが針から逃れようともがいているのが感じ取れたが、彼らには契約にサインする以外に道がないだろうことがわかった。
自分の知っている人について考えてみれば、動物テストが簡単に実施できるのがわかるだろう。その人のイメージを思い浮かべ、「なんとかさんは動物だ」という文章を考える。それで笑ったならその人は動物ではない。大企業はこのような資質を必要とせず、欲しいとも思わないかもしれないが、スタートアップでは必要になるのだ。
プログラマについては、追加で行うテストが3つあった。その人は純粋に頭がいいか。そうであるなら、その人は物事を成し遂げるか?
そして最後に、ハッカーの中には我慢しかねる個性を持った人もいるので、一緒にいて耐えられるか、というのがある。
最後の質問で除外される人というのは驚くほど少ない。本当に頭のいい人間であれば、どんなにナード的であろうと私たちは我慢できた。私たちが我慢できなかったのは、態度がばかでかい人間だ。しかしそういう人の多くは本当に頭がいいわけではないので、3番目のテストはある意味で最初のテストを言い換えているに過ぎない。
ナードが我慢しかねる場合というのは、通常彼らが頭を良く見せかけようとあまりに努力しているためだ。しかし頭のいい人ほど、頭が良さそうに振る舞わなきゃいけないというプレッシャーを感じないものだ。だから純粋に頭のいい人というのは、
「知らない」「たぶんあなたの方が正しい」「私はxのことは良く理解していない」というようなことを言える能力によって識別できる。
ただしこのテクニックはいつも機能するとは限らない。人は環境によって影響を受けるものだからだ。MITのコンピュータサイエンス学科には、無愛想な知ったかぶりみたいに振る舞う伝統があるようだ。古典的な航空パイロットの態度がチャック・イェーガーに由来するというのと同じ意味で、彼らの態度はマービン・ミンスキーに由来しているのだという話を聞いた。純粋に頭のいい人たちであっても、所によってそのような振る舞いをするようになることを考慮しておく必要がある。
私たちの元にロバート・モリスがいてくれたのは大いに助けとなったが、彼は私の出会った中で最もやすやすと「わからない」と言える人間だ。(少なくとも彼がMITの教授になる前はそうだった)。ロバートのいるところでは誰も頭が良く見せようとすることはなかった。ロバートが彼らより頭がいいだろうことは明らかであり、そのロバートは頭が良く見せようなどとはまるでしなかったからだ。
他のスタートアップの多くと同様、私たちのスタートアップも友達のグループではじめた。そして私たちが雇った人のほとんども個人的なつてを通して見つけた。これはスタートアップと大企業の決定的に違うところだ。誰かとたとえ2、3日でも友達でいれば、企業が面接で知り得るより多くのことがわかるのだ。[2]
スタートアップがよく大学の近くで生まれるのは偶然ではなく、それは大学が頭のいい人々が出会う場所だからだ。MITやスタンフォードのまわりにテクノロジー企業が現れるのは、人々が大学の授業で学んだことのためではない。入試方法が変わらないなら、彼らが授業中にキャンプファイアして歌っていても結果は一緒だろう。
あなたがスタートアップを始めるなら、大学や大学院で知り合った人と一緒にやる可能性が高いだろう。それなら、理論上は大学では可能な限り多くの頭のいい人たちと友達になるよう努めるべきだということになる。でもそれは違う。意識的に頭のいい人たちと近づきになろうとはしないことだ。ハッカー相手にそれはうまくいかないのだ。
大学でやるべきなのは、自分のプロジェクトに取り組むということだ。ハッカーは別にスタートアップを立ち上げるつもりがなくともそうすべきだ。それがプログラミングを学ぶ唯一本当の方法だからだ。場合によっては他の学生と共同でやってもいい。これは優れたハッカーと知り合う最良の方法だ。そのプロジェクトがスタートアップへと成長することだってあるかもしれない。しかし、もう一度言っておくが、そのどちらも直接の目的とはしないことだ。無理にはやらないこと。ただ自分の好きなことを、好きな人たちとやることだ。
創業者は2人から4人の間が理想的だ。たった1人で始めるというのは難しすぎる。1人で会社を立ち上げることの精神的な負担に耐えるのは困難だ。相当な精神的負担でも耐えられそうに見えるあのビル・ゲイツでさえ、共同創業者を必要としたのだ。しかし会社が集合写真みたいに見えるほどたくさん創業者がいるのも考えものだ。最初はそんなにたくさん人が必要ないということもあるが、もっと大きいのは創業者が多いほど意見の相違がひどくなるということだ。創業者が2人か3人しかいなければ、争いを即座に解決しなければ会社が消えることになる。7人か8人いれば、争いは長引き、派閥ができる。投票なんかしたくないだろう。全員一致する必要があるのだ。
技術的なスタートアップ??スタートアップの大半はそうなのだが??では、創業者に技術的な人間を含めるべきだ。インターネットバブルの間にはビジネスの連中によって立ち上げられたスタートアップがたくさんあって、彼らはハッカーを探して製品を作らせようとした。これはあまりうまく機能しない。ビジネスの連中というのは技術で何をするか決めるのがへたなものであり、それは彼らにはどのような選択肢があるのかわからず、また、どの問題が難しくて、どの問題が簡単なのかわからないためだ。そしてビジネスの連中がハッカーを雇おうとしても、彼らには誰が優れているのか見分けられない。これはハッカー自身にとっても難しいことだが、ビジネスの連中にはルーレットと一緒になる。
これは場合による。私たちは加えようと思って、「ビジネス」というミステリアスなものについて知っていそうな人たち何人かに社長になってくれるように頼んでみた。しかし彼らがみんな断ってきたので、私たちは自分たちだけでやらざるをえなかった。そしてわかったのは、ビジネスというのは大いなる謎でも何でもないということだった。物理学や医学みたいにものすごい勉強を要求されるものではない。ただ人々が自分の商品にお金を払ってくれるかやってみるというだけだ。
私がビジネスをそんなに謎に思っていたのは、ビジネスをやるという考えを嫌っていたためだ。顧客のくだらない問題にかかずらうのではなく、純粋で知的なソフトウェアの世界で働きたいと思っていたのだ。ある種の仕事に引きずり込まれるのを嫌う人は、しばしばその仕事に対する防御的な無能さを発展させる。ポール・エルデシュはこの能力について際立っていた。グレープフルーツを半分に切ることさえできそうに見えず(店に行って買ってくることは言うに及ばない)、そういったことは他の人がしてくれるようにしむけ、自分の時間はすべて数学にあてていたのだ。エルデシュは極端な例だが、多くの夫たちは多かれ少なかれ同じトリックを使っている。
ひとたび防御的無能さを捨てることを余儀なくされると、ビジネスはそんなに難しくもなければ、怖れていたほど退屈なものでもないことがわかった。ビジネスには税法とかデリバティブの価格付けのような極めて難しい難解な部分もあるが、スタートアップではそのようなことを知っている必要はない。スタートアップを運営する上でビジネスについて知っていなければならないことは、ビジネススクールどころか大学に入る前からみんな知っているような常識的なことだけなのだ。
400のリストを上から見ていって、MBAを持った人にチェックを付けていけば、ビジネススクールに関するある重要なことがわかる。22番目にNikeのCEOフィル・ナイトが出てくるまで、MBAは1人もいないのだ。トップ50の中にMBAはたったの4人しかいない。Forbes
400のリストを見ていて気付くのは、多くの人が技術的なバックグランドを持っているということだ。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ラリー・エリソン、マイケル・デル、ジェフ・ベゾス、ゴードン・ムーア。テクノロジービジネスの支配者たちは、ビジネス方面からではなくテクノロジー方面から現れるのだ。だからビジネスで成功する助けになることを学ぶために2年間を投資しようと思っているなら、MBAを取るよりはハックの仕方を学ぶ方がいいことを証拠が示しているのだ。[3]
それでもスタートアップにビジネスの人間を入れたいと思う理由が1つある。顧客が何を求めているのかということに喜んでフォーカスできる人間が少なくとも1人必要なのだ。それができるのはビジネスの人間だけだと思っている人もいる??ハッカーはソフトウェアを実装はできてもデザインはできないというのだ。ナンセンスだ。プログラミングの仕方を知っているということによって、ハッカーがユーザを理解する妨げとなるものは何もない。そしてプログラミングの仕方を知らないことによって、ビジネスの連中が魔法のようにユーザを理解できるようになるわけでもない。
ユーザを理解することができないなら、それを学ぶか、あるいはそれができる共同創業者を見つけることだ。テクノロジースタートアップにとってこれは最も重要な問題であり、他の何よりもスタートアップを沈ませる岩になるのだ。
これを気にかけなければならないのはスタートアップばかりではない。ビジネスが失敗する原因のほとんどは顧客が求めるものを与えないことだと思う。レストランを考えてみよう。多くのものがはじめの四半期の内に失敗する。しかしすごくうまい料理を出すレストランが潰れるなんて考えられる?
うまい料理を出すレストランは繁盛するように見える。うまい料理を出すレストランは、高価だったり、混んでいたり、騒がしかったり、薄汚かったり、へんぴな場所にあったり、サービスが悪かったりしても、お客がやってくる。料理が大したことのないレストランでも、何かの工夫で客を集められるのは事実だ。しかしそういうアプローチはとてもリスクが高い。単にうまい料理を出す方が、ずっと話が早いのだ。
テクノロジーについても同じことが言える。スタートアップが失敗する理由についていろんな話を耳にするだろう。しかしものすごく人気の製品を持ちながら失敗する会社というのは想像できるだろうか?
失敗するスタートアップのほとんどすべてについて言えるのは、本当の問題は顧客がその製品を欲しがってないということなのだ。会社の潰れた理由は多くの場合「資金を使い果たしたため
すべてのスタートアップがすべきことについて考えていたとき、私は4番目のものを付け加えるところだった。「version
1を可能な限り早く出すこと」。しかしこれは含めないことにした。これは顧客が欲しがるものを作らないことに含まれるからだ。顧客が欲しがるものを作るための唯一の方法は、彼らの前でプロトタイプを造り、彼らの反応に応じて改良していくということなのだ。
それとは別なアプローチは、私が「ヘイルメアリー」戦略と呼ぶものだ。製品の精巧なプランを造り、それを開発するエンジニアのチームを雇い(このやり方をする人たちはハッカーのことを
「エンジニア」という呼び方をする)、そして一年後に200万ドル費やして誰も欲しがらないようなものを作っていたことに気付くのだ。これはバブルの間には珍しいことではなく、ビジネスタイプの連中が動かしていた会社では特にそうだった。彼らはソフトウェア開発を何か恐ろしいことみたいに考えていて、立ち向かうには細心のプランが必要だと思っていたのだ。
私たちはそのようなアプローチは考えたこともなかった。Lispハッカーである私は、ラピッド・プロトタイピングの伝統から来ている。それがどのようなプログラムを書く場合にでも正しい方法だと言うつもりはないが(少なくともここでは)、スタートアップがソフトウェアを作る場合には間違いなく正しい方法だ。あなたの最初のプランはほぼ間違いなくどこか間違っており、あなたの優先度第一の仕事は、どこが間違っているのか見つけ出すということだ。そしてそのための唯一の方法は、それを実装してみるということなのだ。
他のスタートアップの多くと同様に、私たちも途中で計画を変えた。最初私たちはWebコンサルタントを顧客だと思っていた。しかし彼らが私たちを嫌っていることが分かった。それは私たちのソフトウェアが簡単に使え、おまけに私たちはサイトのホスティングまでしていたからだ。彼らのクライアントはすぐに彼らをクビにするだろう。私たちはまた、たくさんのカタログ会社から契約を取れるだろうと思っていた。オンラインで売るというのは彼らの既存のビジネスの自然な延長になるからだ。しかし1996年当時には強引な売込みがされていた。私たちが話をしたカタログ会社の中間管理職は、Webをチャンスとしてではなく、単に自分たちの仕事を増やすものとして見ていた。
私たちは冒険的なカタログ会社を何社か顧客に得ることはできた。その中にはFrederick's of
Hollywoodもあり、これはサーバの高負荷を扱う貴重な経験をさせてくれた。しかし私たちのユーザの多くは小さな個人商店で、Webをビジネスを構築するチャンスとみなしていた。リアルの小売店もあったが、多くはオンライン上にしか存在しなかった。それで私たちは方向を変えて、それらのユーザにフォーカスすることにした。Webコンサルタントやカタログ会社がほしがる機能に集中するかわりに、ソフトウェアを使いやすくすることに心を砕いた。
私はそこから貴重なことを学んだ。テクノロジーを使いやすくするということには、ものすごく真剣に取り組む価値のあるということだ。ハッカーはコンピュータを使い慣れており、ソフトウェアが普通の人たちをどれほど怖がらせているか想像もできない。スティーブン・ホーキングの編集者は、本に方程式を1つ入れるごとに本の売り上げが半分になるのだとホーキングに言ったそうだ。テクノロジーを使いやすくすべく働くときには、このカーブを下るかわりに上ることになる。使いやすさの10%の改善は、売り上げを10%増やすわけではない。それは売り上げを2倍にもするのだ。
彼らを観察するのだ。そのための最良の場所の1つはトレードショーだった。トレードショーというのは新規顧客を得る方法としては引き合わないが、マーケットリサーチの方法としては価値がある。私たちはトレードショーに行って決まり切ったプレゼンテーションをしただけではなかった。私たちは人々に本物のちゃんと動くオンラインストアを構築するところを見せた。結果として彼らが私たちのソフトウェアを使うところを目にし、彼らが何を必要としているのか話をすることができた。
あなたのスタートアップがどのようなものであれ、創業者であるあなたがユーザの望むことを理解するには努力が必要だろう。ユーザについて調査することなくあなたに作れるソフトウェアというのは、あなたが典型的なユーザであるようなソフトウェアに限られる。しかしそのようなものはオープンソースとして作られる傾向がある。オペレーティングシステムや、プログラミング言語や、エディタなんかがそうだ。だからもしあなたが金になるテクノロジーを開発しようというなら、あなたはたぶん自分のような人のためのものを開発することにはならないだろう。実際このことはスタートアップのアイデアを出すための方法として使うことができる。
スタートアップについて考えるとき、多くの人はAppleやGoogleのような会社を考える。これらの会社は大きなコンシューマーブランドになっており、誰でも知っている。しかしそういうスタートアップに対して、ニッチマーケットやインフラの世界で静かに生息している会社は20倍もいるのだ。だからそちらの方が成功するスタートアップを作れる可能性は大きい。
言い換えると、大きなコンシューマーブランドになる必要があるようなスタートアップを作ろうとするなら、成功の道は険しくなるということだ。成功の見込みが高いのはニッチマーケットの方だ。スタートアップは人々が以前手にしていたのより良いものを提供することで金を得る。だから一番チャンスがあるのは最も状況がひどいところということになる。そして企業のIT部門以上にひどいところを見つけるのは難しいだろう。あなたは企業がソフトウェアに費やしている金額がどれほどになるか聞いても信じないと思う。そしてそれによって彼らが得ているのはクズだ。このアンバランスが、すなわちチャンスなのだ。
スタートアップのアイデアがほしいなら、あなたにできる最も効果的な方法は、中くらいのサイズの非テクノロジー企業を見つけ、彼らがコンピュータを使って何をしているか2週間ほど観察することだ。優れたハッカーの多くは、金持ちのアメリカ人がブラジルのスラムの有様を知らないのと同様、そういった場所で行われている恐ろしいことについて夢にも知らないものだ。
小さな会社のためのソフトウェアを書くところから始めることだ。彼らの方が売り込むのが容易だからだ。大企業相手にものを売るのは儲けが大きいので、彼らが今使っているクズを売っている人々はそのために膨大な金を使っている。あなたはOracleを技術的に出し抜くことはできたとしても、Oracleのセールスマンを売込みで出し抜くことはできない。だから優れたテクノロジーで勝負するつもりなら、小さな顧客をターゲットにしたほうがいい。[4]
加えて彼らはマーケットにおいて戦略的により価値のある部分なのだ。テクノロジーの世界では、常にローエンドがハイエンドを食っている。安価な製品をより強力にするほうが、強力な製品を安くするよりも簡単なのだ。だから安価でシンプルというところから始めた製品は徐々に強力なものへと成長していき、水が部屋に満ちるように、
「ハイエンド」の製品を天井の方へと押し込めることになる。Sunはこれをメインフレームに対して行い、IntelはSunに対して行っている。Microsoft
WordはInterleafやFrameMakerのようなデスクトップパブリッシングソフトウェアに対してこれを行った。大衆向けデジタルカメラはプロ向けの高価なモデルに対してこれを行っている。Avidは特殊なビデオ編集システムの製造者に対してこれを行い、そしてAppleが今、同じことをAvidに対して行っている。ヘンリー・フォードはそれ以前の自動車メーカーに対してこれを行った。あなたがシンプルで安価な選択肢を提供するなら、最初に売り込むのがより簡単なことがわかるだけでなく、マーケットの残りの部分を征服するのに最適な位置にいることに気付くだろう。
誰かにあなたの下を飛ばせるというのはすごく危険だ。あなたが最安価で、もっとも簡単に使える製品を持っているなら、ローエンドを抑えることができる。しかしそうでないなら、あなたはそれを持つ相手の照準に入っていることになる。
これを実現するには、資金が必要になる。スタートアップによっては自己資金でやっているが??Microsoftが例だ??多くは違う。投資家の金を受け取るのは賢明な選択だと思う。自己資金でやるためには、コンサルティング会社から始める必要があり、そしてコンサルティング会社から製品会社に切り替えるというのは難しいことなのだ。
金銭的には、スタートアップは成績に合格/不合格しかない授業みたいなものだ。スタートアップで金持ちになる方法は、会社の成功のチャンスを最大化することであって、自分が持つ株の量を最大化することではない。だから株を何か成功の見込みを高くするものと交換できるなら、それはおそらく賢明な選択なのだ。
多くのハッカーは、投資を受けることを何か怖いミステリアスなプロセスだと思っている。実際は退屈なものだ。どんな仕組みになっているのか簡単に説明しよう。
最初に必要となるのは、プロトタイプを開発する間の費用の数万ドルだ。これはシードキャピタルと呼ばれている。わずかな金額なので、シードキャピタルを手に入れるのは比較的容易だ??少なくともイエスかノーの答がすぐに得られるという意味で。
通常、シードマネーは「エンジェル」と呼ばれる裕福な個人から得られる。しばしば彼ら自身もテクノロジーで裕福になった人たちだ。シードのステージにおいては、投資家はあなたが詳細なビジネスプランを持っていることを期待していない。彼らは迅速に決断するものとされている。半ページの契約文書だけで1週間以内に小切手が届くことも珍しくはない。
私たちはViawebを、友人のジュリアンからの10,000ドルのシードマネーで始めた。彼は私たちに金以上のものを与えてくれた。彼はかつて会社のCEOをしており、企業弁護士でもあったので、ビジネスについて貴重なアドバイスをたくさんしてくれた。そして会社を立ち上げる上で必要となる法務的なこともすべてやってくれた。加えて彼は次のラウンドの投資を提供した2人のエンジェルのうちの1人を紹介してくれた。
エンジェルの中には、特にテクノロジーのバックグランドを持つ人であれば、あなたがしようとしていることのデモと口頭の説明だけで満足するかもしれない。しかし多くのエンジェルはビジネスプランのコピーを求めるだろう。自分が何に投資したのか思い出すために。
私たちのエンジェルがビジネスプランを求めたとき、今思うとおかしいくらいに私は不安になった。「ビジネスプラン」には「ビジネス」という語が含まれているので、ビジネスに関する本を読まなきゃ書けないものなんだろうなと思っていた。しかしそうではなかった。この時点で投資家の多くが期待するのは、あなたがやろうとしていることと、それでどうやって金を得るのかということについての簡単な説明と、それに創業者の履歴書だけだ。ちょっと腰を据えてあなた方が話し合ったことについて書き出してみれば、それで十分なものが得られる。それには2時間くらいしかかからないだろうし、書いているうちに何をすべきかについてのアイデアがもっと出てくるかもしれない。
エンジェルの小切手の受取人として、あなたは何らかの会社を持つ必要がある。自分で法人組織を作るというだけなら難しいことではない。問題は、会社が存在するためには、創業者を誰にし、それぞれが株をどれだけ持つか決める必要があるということだ。同じような資質を持ち、同じように会社に貢献している2人の創業者がいるというなら、話は簡単だ。しかしたくさんの人がいて、それぞれ貢献しようと思う度合いが異なっているという場合には、株の配分を調整するのは難しい問題となりうる。そしてひとたび決めてしまうと、石に刻んだように動かし難くなってしまうものだ。
この問題に対処するためのうまい方法は私も持っていない。私に言えるのは、それを適切なものにすべく大きな努力を払えということだ。ちゃんとできたか判断するための目安ならある。全員が少しばかり損をしているように感じ、自分の株の取り分よりもっと多くのことをやっていると思っているなら、株は最適に配分されている。
会社を作るためには、もちろん法人手続き以上にやることがある。保険、事業許可、失業手当給付、IRS(アメリカ内国歳入庁)関係の様々なこと。このリストがどんなものになるのかさえ、あまり確信がない。それというのも、私たちはこれをスキップしてしまったからだ。私たちが1996年の末に投資を受けたとき、私たちはすばらしいCFOを雇い、彼が遡ってすべてをきちんとしてくれたのだ。会社を立ち上げるときにすべきことをすべてやらなかったとしても、別に誰かが逮捕しにやってくるわけではないということがわかった。それはいいことなのだ。そうでなければスタートアップの多くは立ち上がっていないだろう。[5]
会社組織にする時期を遅らせるのには危険がある。創業者の中の誰かが袂を分かって同じことをする別な会社を自分で始めようとするかもしれないからだ。これは実際に起きていることだ。だからあなたが会社を設立するときには、株の配分をするときと同様、創業者全員で契約にサインして、みんなのアイデアは会社のものであり、この会社がみんなの唯一の仕事となるということに同意すべきだ。
会社を設立するときにはまた、彼らが他にどんな契約にサインしているか尋ねるべきだ。スタートアップが直面しうる最悪の問題の1つは知的財産上の問題にぶつかることだ。私たちは直面し、それはどんな競合よりも私たちを危機に陥れることになった。
私たちの買収の過程の中程になって、社員の1人が、彼が大学院に行く金を出してくれた大企業に彼のアイデアはすべて属するという契約に縛られていたことがわかった。それは理屈の上では、私たちのソフトウェアの大きな部分が、どこかよそに握られているということを意味した。そのため買収はその問題が解決するまで足止めされることになった。問題は、私たちは買収されようとしているところだったので、少ない手持ちの現金でやりくりしていたということだ。今や進み続けるためにもっと資金を得る必要が生じた。しかし知的所有権の問題が雲のように頭上に漂っているというときに資金を調達するのは困難だった。投資家たちにはそれがどれほど深刻なものか判断できないからだ。
私たちの既存の投資家たちは、私たちが金を必要とし、他のどこからも得られていないことを知っており、この時ある手を打ってきた。その詳細については書かないが、「エンジェル
」という言葉がメタファだということだけ言っておこう。その結果として創業者たちは、サーバの管理の仕方を投資家たちに簡単に説明してから会社を去ることを提案された。そしてこの間に、買収側の会社はこの遅れを口実として逃げ出して行った。
不思議なことに、それがすべて結果的にうまくいった。投資家たちは手を引き、適切な評価額で新たな投資が得られ、あの大企業も最終的には私たちのソフトウェアに対して権利を有しないという内容の書面をよこし、そして6ヶ月の後に、前の買収者が出すと言っていたよりもずっと大きな額でYahooに買収されることになった。だから最後には私たちはハッピーになれたわけだが、この経験で私の寿命は何年か縮んだんじゃないかと思う。
私たちみたいにならないようにすることだ。スタートアップを完成する前に、みんなに以前の知的所有権上の経歴について聞いておくことだ。
ひとたび会社を立ち上げたなら、次は資金調達するわけだが、金持ちの家に行ってドアを叩き、実際のところちょっとしたアイデアを持った野郎どもというに過ぎないものに何万ドルか投資してくれと頼むのは、ちょっとずうずうしく思えるかもしれない。しかし金持ちの立場に立って見れば、もっと勇気づけられるのではないかと思う。裕福な人たちの多くはいい投資先を探しているものだ。成功する見込みがあると自分で本当に思っているのなら、投資させてあげることで、あなたは彼らにいいことをしているのだ。アプローチされて煩わしく感じるのとともに彼らが考えるのは、
通常、エンジェルは金銭的には創業者と同等だ。彼らはある種の株を得、将来の増資で同じだけ薄められる。彼らが受け取るべき株はどれだけだろうか?
それはあなたがどれくらい野心的かによる。あなたが会社のxパーセントをyドルで提示するというとき、会社全体の価値についてある主張をしていることになる。ベンチャー投資は通常この数字を使って言い表されている。10万ドルと引き替えに投資家に発行済み株式の5%を渡すなら、評価額200万ドルで取引したことになる。
合理的な方法というのは存在しない。この段階における会社というのは賭でしかないのだ。私たちが資金調達していたとき、私はそのことを理解していなかった。ジュリアンは私たちが会社を数百万ドルと評価すべきだと考えていた。私はほんの2、3千行のコード??その時点で私たちにあったすべて??に何百万ドルの価値があると主張するなんてばかげていると思った。最後には私たちは100万ドルということにした。ジュリアンがそれより評価額の低い会社には誰も投資しないと言ったからだ。[6]
その当時私がわかっていなかったのは、評価額というのは私たちがそれまでに書いたコードの価値ではないということだ。それは(後に正しいことが示された)私たちのアイデアの価値であり、そして(すごく大きいことが後でわかることになる)私たちが将来に渡ってするすべての仕事の価値なのだ。
投資の次のラウンドでは実際のベンチャーキャピタルと取引することになる。しかし前のラウンドでの投資を使い果たしてしまうまでVCにアプローチするのを待つことはない。VCは決断するのが遅い。それは何ヶ月もかかるかもしれない。VCと交渉している間に資金切れになりたくはないだろう。
実際のVCから金を得るのは、エンジェルから資金を得るのにくらべてずっと大ごとだ。金額は大きく、通常数百万ドルになる。だから取引には時間がかかり、疲弊させられ、より厄介な状況を強いられることになる。
VCはしばしば自分で選んだ新しいCEOを据えようとする。その言い分はビジネスのバックグランドを持った経験を豊かな分別ある人間が必要だということだ。場合によってはそれが正しいこともあるのかもしれない。しかしビル・ゲイツは若くて経験もビジネスのバックグランドも持っていなかったが、うまくやってのけたように思える。そしてスティーブ・ジョブズはというと、経験を積んだ分別ある人間によって自分の会社から蹴り出されることになったのだ。その分別ある人間はその後会社をダメにした。だからビジネスのバックグランドを持つ経験豊かな分別ある人間というのは過大評価されているように思う。私たちはそういう人たちを
「ニュースキャスター」と呼んでいて、それは彼らがきちっとした髪型をして自信を持った深い声で話し、テレプロンプタに出ている以上のことは知らないのが普通だからだ。
私たちはたくさんのVCと話をしたが、結局私たちはエンジェルからの資金だけでやりくりした。その主な理由は、有名VCが契約の一部として押しつけてくるニュースキャスターを怖れていたためだ。プレス向けに話をするというところで満足してくれるならいいのだが、会社の運営について口を突っ込んできたらどうする?
そうなったら悲惨だ。私たちのソフトウェアはすごく複雑なものだったからだ。私たちの会社は優れたテクノロジーで勝つというのが戦略だ。戦略的な決定はほとんどがテクノロジーに関することになる。そしてテクノロジーに関することであれば、私たちは誰の助けも必要としなかった。
これは私たちが公開企業にならなかった理由でもある。1998年にCFOがそうするように私を説得したことがあった。その当時はドッグフードのポータルでさえ株式公開できた時代だ。私たちの会社には本物の製品と本物の収入があったので、公開すればうまくいったかもしれない。しかしそれによってニュースキャスターを引き取ることになるのではないかと私は怖れていた。誰か
そういうトレンドにGoogleが背いているのを見て私は嬉しく思う。彼らはIPOをするときにウォールストリート語を話しはしなかった。そしてウォールストリートは買わなかった。今やウォールストリートは集合的に後悔に暮れている。この次はもっと注意を払うことだろう。ウォールストリートは金がかかわるときには新しい言語を素早く学ぶのだ。
VCと交渉するときには、あなたは自分で思っているよりも利点を持っている。その理由は他のVCだ。私は今ではたくさんのVCを知っているが、彼らと話してみれば、それが売り手市場なことがわかるだろう。今でさえ金が多すぎ、選ぶべきうまい取引は少なすぎるのだ。
VCはピラミッドを形成している。頂点にはセコイアやクライナー・パーキンスのような有名所がいるが、その下にはあなたが聞いたこともないようなたくさんのVCがいる。彼らに共通しているのは、彼らからの1ドルは1ドルの価値だということだ。多くのVCは金を提供するだけでなく、コネとアドバイスを提供すると言うだろう。あなたが話している相手が
ビノド・コースラやジョン・ドーアやマイク・モーリツなら、それは本当だ。しかしそういったコネやアドバイスはすごく高くつくかもしれない。そして食物連鎖を下っていくと、VCは急速にできが悪くなる。トップから何歩か下りるだけで、Wiredを読んで業界用語を覚えたような銀行家を相手にすることになる。(おたくの製品はXMLは使ってるの?)
だから経験やコネについて彼らの言うことは疑ってかかることをお勧めする。基本的にVCは金の出所以外のものではない。私なら一番多くの金を、一番早く、余計な紐なしで提供してくれる所を選ぶ。
VCにどこまで話していいか迷うかもしれない。そして悩むべきなのだ。彼らはいつかあなたの競合に投資するかもしれない。私が考える最善のプランはこうだ。あまりに秘密にはしないこと、しかしすべてを話すのもいけない。いずれにせよ、VCの多くは彼らに興味があるのはアイデアよりも人間の方だと言うだろう。彼らがあなたのアイデアについて話したがる理由は、あなたを判断するためであって、アイデアを判断するためではない。あなたが自分のやっていることをわかっているように見えさえするなら、いくつかのことは彼らから隠しておいてもいい。[7]
たとえ金がほしくない場合でも、可能な限り多くのVCと話すといい。それは(a) 彼らはあなたの会社を買ってくれる企業の重役をしているかもしれず、(b)
あなたが印象的に見えるなら、彼らはあなたの競合に投資する気をなくすだろうからだ。VCに接触するための最も効果的な方法としては、特に自分のことを彼らに知ってもらいたいが別に金がほしいわけではないというのであれば、カンファレンスがいい。カンファレンスというのはしばしばスタートアップがVCにプレゼンする場となることを意図して開かれている。
使わない、というのが答だ。失敗するスタートアップのほとんどすべてについて、失敗の表面的な原因は金を使い果たしてしまうということだ。まあ普通は何かもっと根深い誤りがあるものだが。しかしたとえ表面的な原因であるにせよ、避けるべく精一杯努めるべきだ。
バブルの当時は多くのスタートアップが「早く大きく」なろうとした。理念的には、これは「多くの顧客を早く得る」ことを意味する。しかしこれは容易に「多くの人を早く雇い入れる
この2つのバージョンのうち、顧客を早く得ることの方が好ましいのはもちろんだ。しかしそれでさえ過大評価されているかもしれない。そのアイデアは、そこへ最初にたどり着いて、すべてのユーザを囲い込んでしまい、競合には何も残さない、ということだ。しかし多くのビジネスにおいて、マーケットに最初に登場することのアドバンテージは、そんなにすごく大きいわけではない。Googleはここでもいい例になっている。彼らが現れたとき、検索というのは成熟したマーケットで、ブランドの構築に何百万ドルもつぎ込んでいる大手によって支配されていると見られていた。Yahooに、Lycosに、Exciteに、Infoseekに、Altavistaに、Inktomi。1998年というのは、確かにこのパーティにやってくるにはちょっと遅すぎた。
しかしGoogleの創業者たちは、検索においてはブランドには何の価値もないということをわかっていた。いつでもやってくることができ、そして何か他よりいいものを作るなら、ユーザは徐々に流れ込んでくる。この点を強調するかのように、Googleはまったく広告をしなかった。彼らはディーラーのように、商品(広告)を売ったが、それを自分で使うほど愚かではなかった。
Googleが葬ってきた競合たちは、その何百万ドルというお金をソフトウェアの改良のために使っていたなら、もっとうまくいっていたかもしれない。未来のスタートアップは彼らの誤りから学ぶべきだ。タバコやウォッカや洗剤のような差別化できない製品のマーケットにいるのでもない限り、ブランドの広告に大金を費やすというのは何かが壊れていることの徴なのだ。そしてWebビジネスにおいては、そんなに差別化できないようなものはほとんどない。現在出会い系サイトが大きな広告キャンペーンを張っているが、それは彼らが腐りかけて取り除くべきことの証拠なのだ。(クンクン、マーケティングの連中が動かしている会社の臭いがするぞ。)
私たちは状況によってゆっくりと成長せざるを得なかったが、振り返ってみれば、それはいいことだったのだ。創業者たちはみんな会社のあらゆる仕事を覚えることになった。ソフトウェアを書くだけでなく、私はセールスやカスタマサポートもする必要があった。私はセールスはあまりうまくはなかった。私は社長ではあったが、いいセールスマンの口先のうまさは持ち合わせていなかった。潜在的な顧客への私のメッセージは、
「おたくがオンラインで売らないとしたら間抜けもいいところだ。そしてオンラインで売るのによそのソフトを使うとしたらおたくは間抜けだ」。どちらの主張も真実ではあったが、それは人を説得するときの仕方ではなかった。
しかし私はカスタマサポートの方はうまかった。カスタマサポートの人間が製品を隅々まで知り尽くしているというだけでなく、バグでもあろうものなら面目なく謝罪し、電話で話しているその場ですぐに修正するというのを想像してみてほしい。顧客は私たちを好きになってくれた。そして私たちは顧客のことを好きになった。口コミの評判でゆっくりと成長しているというときには、最初の一団のユーザたちというのは、自力で見出した目ざとい人たちなのだ。スタートアップの初期において、優れたユーザほど価値のあるものはない。彼らに耳を傾けるなら、勝てる製品をどうすれば作れるか教えてくれるだろう。彼らはそのアドバイスをただでしてくれるだけでなく、お金まで払ってくれるのだ。
私たちが公式にローンチしたのは1996年の始めで、その年の終わりには70ほどのユーザがいた。これは「早く大きくなる」時代のことであり、私は会社が小さくて世に知られていないことを懸念していた。しかし実際には私たちはまさに正しいことをしていたのだった。ひとたび(ユーザの数の上にせよ社員の数の上にせよ)大きくなったなら、製品を変えるのは難しくなる。この年は私たちの製品を改良するための実験の年だったのだ。この年の終わりまでには、私たちは競合よりはるかに先を行っており、彼らに追いつける見込みはなかった。そして私たちのところのハッカーたちはみんな長い時間をユーザと対話することに使っていたので、私たちはオンラインコマースについて誰よりも良く知っていたのだ。
これはスタートアップとして成功するための鍵だ。自分のやっているビジネスがわかっていることほど重要なことはない。誰でもビジネスをやっている人間なら職務上そのビジネスをわかっているものだと思うかもしれない。全然違う。Googleの秘密兵器が何かというと、それは彼らが単に検索がわかっているということなのだ。Googleが現れたとき私はYahooで働いていたが、Yahooには検索がわかっていなかった。なぜそう言えるかというと、私は検索機能を改善すべきだとその筋に説得を試みたことがあって、そうして当時の会社の方針を回答として受け取った。
「Yahooはもはや単なる『検索エンジン』ではない。検索は今では我々のページビューにほんのわずかの割合を占めるにすぎず、月々の成長率にも満たない。我々は今や『メディア企業』(あるいは『ポータル』であれ何であれ)として確立しており、検索機能はへその緒みたいに安全に切り捨てられるものにすぎない」
それはページビューの小さな部分を占めるに過ぎないのかもしれないが、それは重要な部分なのであり、それはWebセッションが始まる部分のページビューだからだ。Yahooも今ではそれがわかっていると思う。
多くのWeb企業がいまだ理解していないことでGoogleが理解していることが他にもいくつかある。中でも一番重要なのは、ユーザを広告主よりも前に置くということだ。金を出しているのが広告主で、ユーザはお金を払っていないのだとしてもだ。私のお気に入りのバンパーステッカーは、
「みんなが引っ張っていけば、リーダーは後からついてくる」というやつだ。これをWeb向けに言い換えると「ユーザをみんな手に入れれば、広告主は後からついてくる」となる。より一般化すると、製品はまずユーザを満足させるようにデザインすることで、そのあとそこからどうやって金を得るか考えればいいということだ。ユーザを最初に置かないなら、そうする競合に差を付けられることになる。
ユーザが好きになるものを作るためには、彼らを理解する必要がある。そしてあなたの会社が大きくなるほど、それは難しくなる。だから私は「ゆっくり大きくなろう」と言おう。資金をゆっくり使うなら、学べる時間は長くなる。
金をゆっくり使うべきもう一つの理由は、安上がりの文化を育むということだ。これはYahooが理解していたことだ。デビッド・ファイロの肩書きは「チーフYahoo」だが、彼は自分の非公式の肩書きが
「チープYahoo」であることを誇りにしていた。私たちがYahooに合流して間もなく、ファイロからメールを受け取った。彼は私たちのディレクトリツリーを見て回って、そんなにたくさんのデータを高価なRAIDドライブに格納しておく必要が本当にあるのかと聞いていた。私はこれには強い印象を受けた。Yahooの時価総額は当時すでに10億ドルのオーダーになっていたが、それでも依然数ギガバイトのディスクスペースの無駄遣いを気にしていたのだ。
VCから何百万ドルか受け取ると、何か金持ちになったような気になるものだ。あなたは金持ちになってはいないことを認識しておくのが重要だ。金持ちの会社というのは大きな収入のある会社だ。VCの金は収入ではない。それはあなたが収益をあげることを期待して投資家がよこしてくれた金だ。だから何百万ドルという金が銀行口座に入っていようと、あなた自身は依然貧乏なのだ。
多くのスタートアップにとって、モデルとすべきは大学院生であって、法律事務所ではない。クールで安価というところを狙い、高価で派手なのは避けることだ。スタートアップがこのことを理解しているか判断する私たちの方法は、彼らがアーロンチェアを使っているか見るということだ。アーロンチェアはバブルの時に現れて、スタートアップの間でとても人気があった。特に当時すごくありふれていたVCの金で賄っているままごとみたいなスタートアップでそうだった。私たちはすごく安物のオフィスチェアを使っており、肘掛けがみんな取れていた。ときにちょっと当惑することもあったが、今思えば私たちのオフィスの大学院のような雰囲気は、私たちがそれと知らずに正しくやっていたもう一つのことだった。
わたしたちのオフィスはハーバードスクウェアの木造3階建ての建物の中にあった。1970年代くらいまでアパートとして使われており、浴室には足のついたバスタブがあった。そこにはすごく変わった人が住んでいたのに違いなく、壁の隙間にはアルミホイルがたくさん詰め込まれていて、宇宙線を防ごうとでもしているようだった。立派な客がやってきたときには、プロダクションバリューの低さを少し気恥ずかしく感じたが、その場所はスタートアップにとっては完璧な空間だった。私たちは自分たちの役回りを、もったいぶった企業人ではなく、生意気な弱者のように感じており、それはまさにあなたが望むだろう精神だ。
アパートというのはまた、ソフトウェアの開発に向いた場所でもある。キュービクルの並ぶ養豚場はソフトウェア開発するには最悪だ。そういう場所で働いたことがあればわかるだろう。職場でより家にいる時の方がどれほど楽にハックできるか気付いたことはない?
スタートアップのための場所を探しているなら、プロフェッショナルらしく見えなきゃいけないとは思わないこと。プロフェッショナルというのはいい仕事を意味するのであって、エレベータやガラスでできた壁を意味するのではない。私はスタートアップの多くに、最初は企業向けの物件を避けてアパートを借りるようにアドバイスしている。スタートアップのオフィスに住みたいと思っているなら、住む場所としてデザインされたところをオフィスにしたらいいんじゃないの?
安くて仕事するのに適しているということの他に、アパートは一般にオフィスビルよりもいい場所にあるということがある。スタートアップにとって場所はすごく重要なのだ。生産性の鍵は、みんなが夕食後に仕事に戻ってこられるということにある。電話が鳴りやむ時間帯が、仕事を成し遂げるための最適な時だ。社員のグループが一緒に食事しに行き、アイデアについて語り合い、オフィスに戻ってきてそれを実装するなら、すごいことが起きる。だから午後6時以降になると人影が見えなくなる荒涼としたオフィスパークなんかではなく、近くにレストランがたくさんあるような場所をいいと思うだろう。どんなに遅くなろうとみんな車で郊外の家に食事に帰っていくようなスタイルに会社がいったん切り替わってしまうと、極めて価値のある何かが失われてしまうのだ。そういう状態から始めることになったのなら、ご愁傷様。
レッドライン線セントラル近くか、ハーバード、あるいはデイビススクウェア(ケンドールは寂しすぎる)、(2) パロアルトのユニバーシティ通りかカリフォルニアアベニュー、(3)
金を使わないために最も重要なことは、人を雇わないということだ。私は極端なのかもしれないが、人を雇うというのは会社がなし得る最悪のことだと思う。第一に、人に対する支出は繰り返し発生する、一番たちの悪い支出だ。彼らはまたオフィスを拡張する原因になり、クールでないオフィスビルに移転する羽目になるかもしれず、それはソフトウェアの質を下げることになる。しかし何よりも悪いのは、彼らはあなたをスローダウンさせるということだ。誰かのオフィスに頭を突っ込んでアイデアについて話すかわりに、8人の人間がそれについてミーティングすることになる。だから人の数は可能な限り少なくした方がいいのだ。
バブルの間多くのスタートアップはその反対のポリシーでやっていた。彼らは可能な限り早く人を増やしたがっていた。誰かその仕事を肩書に持った人間がいないと何もできないとでもいうようだった。これは大企業の発想だ。頭だけで書かれた組織図の隙間を埋めるために人を雇ったりしないことだ。人を雇うべき唯一の場合は、何かやりたいことがあるが、人がいないためにできないというときだ。
不必要な人を雇うのは高くつき、会社をスローダウンさせることになる。ではなぜほとんどすべての会社がそうしているのだろう?
人は自分のためにたくさんの人間が働いているという考えが好きだというのが主な理由ではないかと思う。この弱さは、しばしばCEOにまで広がっている。あなたが会社を運営することになったとき、人があなたに聞く最も一般的な質問は、従業員は何人いるのかというものだ。それが彼らがあなたの重みをはかる方法なのだ。こんな質問をするのは一般の人ばかりではない。レポーターでさえ同じ質問をする。そして彼らは答が10人というのより1000人という方に感心するのだ。
これは本当にばかげている。2つの会社が同じ収益を上げていているなら、より感心すべきなのは社員が少ない方の会社だ。私のスタートアップは社員が何人かと聞かれたとき、私が
「20人」と答えると、大したことないなと彼らが思っているのを感じ取れた。そう言うときは、こう付け加えてやりたくなったものだ。
「しかし我々の主要な競合は、いつもへこましてやってるのだが、社員が140人いる。だから我々には2つの数字の大きい方の価値が認められてもいいんじゃないか?」
オフィススペースとの関係で言うと、社員数は、印象的に見える方を取るか、印象的である方を取るかという選択になる。高校時代にナードだった人なら、この選択の意味がわかると思う。会社を始めるときにもそれを続けることだ。
それではあなたは会社を始めるべきなのだろうか? あなたはそれをやるのに適した人間なのだろうか? そうであるなら、それはやるに値することなのだろうか?
多くの人は、自分でそう思っているよりもスタートアップを始めるのに合っている。それが私がこの文章を書いている理由だ。スタートアップは今の10倍あってもおかしくはなく、そしてそれはおそらくはいいことなのだ。
私は、今ではそうわかっているのだが、まさにスタートアップをやるのに合った人間だった。しかし最初はそういう考えには恐れを抱いていた。そう感じていたのは、私がLispハッカーだったからだ。私がコンサルティングした会社はトラブルを起こしているように見えたし、Lispを使っている会社というのは他にあまりなかった。私は他の言語でプログラミングするという考えには我慢できなかったので(これは1995年のことで、
「他の言語」はC++を意味していた)、新しく会社を始めるならLispを使うというのが唯一の選択肢に見えた。
そしてそれはちょっとありそうにないことに思えた。あなたがLispハッカーなら私の言う意味がわかるだろう。私はスタートアップを始めることにすごく恐れを感じていて、必要に駆られたのでなければやらなかっただろう。私と同じように、やればうまくいくのに、恐れのためにやろうとしない人が多くいるのに違いない。
優れたハッカーで、年齢は23から38の間くらい、伝統的な職業人生を通じて少しずつお金をもらうのでなく、一発でお金の問題を解決してしまいたいと思っている人。
優れたハッカーがどういうものか正確には言うことができない。一流大学あれば、コンピュータサイエンス専攻の学生の上位半分くらいが該当するかもしれない。しかしハッカーになるためにコンピュータサイエンスを専攻する必要はもちろんない。私は大学では哲学専攻だった。
自分が優れたハッカーなのか判断するのはとても難しく、若い時であればなおさらそうだ。幸いなことに、スタートアップを始めるというプロセスが彼らを自動的に選別するようだ。人がスタートアップ立ち上げへと駆り立てられるのは、既存のテクノロジーを見て、
「この連中はxとyとzをやるべきだってことに気付いてないのか?」と考えることによってだ。そしてこれはその人が優れたハッカーである徴でもある。
23歳に下限を設定したのは、それまで脳に生じない何かがあるためではない。自分の会社をやろうとする前に、それがどんなものか既存の会社で見ておく必要があるためだ。その会社はスタートアップである必要はない。私はカレッジローンを返すため1年間あるソフトウェア会社で働いていた。それは私が大人になってからの人生で最悪の1年だったが、自分ではそれと気付かずにソフトウェアビジネスについて貴重な教訓をたくさん学んだ。このときの場合、多くはネガティブなものだったが。ミーティングをあまり多くしないこと。一塊のコードを複数人に共有させないこと。セールス野郎に会社を仕切らせないこと。ハイエンドの製品を作らないこと。コードを大きくしすぎないこと。バグを見つけるのを品質保証の人間に任せておかないこと。リリースの間を開けすぎないこと。開発者をユーザから隔離しないこと。ケンブリッジからルート128に移転しないこと。そういったことだ。[8]  しかしネガティブな教訓はポジティブな教訓同様に価値がある。もっと価値が高いかもしれない。目を見張るようなパフォーマンスを繰り返すのは難しいが、誤りを避けるのは簡単なことだ。[9]
23歳以前に会社を始めるのが難しいもう一つの理由は、他の人に真剣に受け取ってもらえないということだ。VCはあなたを信用しないだろう。そして投資の条件の中で、あなたをただのマスコットに変えようとするだろう。顧客はあなたがいなくなって彼らを置き去りにしないかと懸念するだろう。あなた自身でさえ、よほど特別な人でもない限り、自分の年齢を気にかけ、自分よりずっと年上の人の上司になることを居心地悪く感じるだろう。そして21で自分より若い人しか雇わないとしたら、選択肢は限られることになる。
やろうと思えば18で会社を始めることだってできる。ビル・ゲイツは19のときにポール・アレンとMicrosoftを始めた。(ポール・アレンの方は22だった。そのことがたぶん違いをもたらしたのだと思う。)
だからあなたが「僕は彼の言うことなんか気にしないよ。僕は会社を今始めてやるんだ」と考えているなら、あなたはそれをやってのけられる人間なのだろうと思う。
もう一方の期限の38の方にはもっと幅がある。私がこの期限をつけているのは、この年をずっと過ぎた後でも十分な体力を保っている人というのは多くないと思うからだ。私は毎日午前2時か3時まで週7日働いていた。今でも同じことができるか自信がない。
それにまた、スタートアップというのは金銭的にもリスクが大きい。失敗して一文無しになるかもしれないことを26の時にやるというのは別にたいしたことではない。どの道多くの26歳は一文無しなのだ。しかし38歳ともなると、そんなに大きなリスクを引き受けることができないかもしれない??特に子供がいる場合には。
経済的には、それは職業人生を可能な限り小さな部分に押し込めるということだ。40年間まっとうなペースで働き続けるかわりに、狂ったように4年間働くのだ。そして結局全部無駄になるかもしれない??もっともその場合には4年もかからないだろうが。
その間は、仕事以外のことはほとんどやらないだろう。それはあなたが働いていない時にも、競合の方は働いているからだ。私が余暇にしたのはランニングくらいだった。これは働き続けるためにやる必要があったことだ。それと15分ほどの夜の読書。その3年の間で、ガールフレンドがいたのは2ヶ月だけだ。2週間に1度、中古書店で何時間か過ごすか、友達の家に夕食に行った。両親の元には2度帰った。それ以外は、ただ働いていた。
働くのは時に楽しくもあり、それは一緒に働いていたのが親友たちだったからだ。仕事はしばしば技術的に興味深くもあった。しかしそれは10%くらいの時間だけだ。あとの90%については、後から思えば当時思っていたよりはおかしく思えることもあると言うのがせいぜいだ。たとえばケンブリッジで6時間の停電があり、ガソリンを使う発電機をオフィスの中で使おうとするという誤りを犯したときのような。あれは二度とやらない。
スタートアップで対処しなければならないクソッタレなことの量は、通常の職業人生において耐えなければならないものより多いとは思わない。実際は少ないんじゃないかと思う。多く見えるのは、短い期間に押し込められているからだ。だからスタートアップがあなたに得させてくれるものは時間なのだ。スタートアップを始めようか悩んでいるなら、そんな風に考えてみるといい。給料をもらって40年間働くよりも、金銭の問題を一発で解決したいと思うタイプなら、スタートアップを始めるのには意味がある。
多くの人が悩むのはスタートアップにするか大学院にするかということだろう。大学院の学生というのは、ソフトウェアスタートアップを始めるのに適した年齢、適したタイプの人間だ。アカデミックな職のチャンスを失うことを心配しているかもしれない。しかしスタートアップに属しながら大学院に行くことも可能だ。特に最初のうちは。私たちの会社に最初からいた3人のハッカーのうちの2人はずっと大学院に籍を置いていて、どちらも学位を取った。大学に居座っている大学院生みたいに強力なエネルギー源というのはそんなにはないものだ。
大学院を離れなければならないとしても、それは最悪の場合でもそう長いことにはならない。スタートアップが失敗するときには、ごく短期間に失敗するだろうから、アカデミックな人生にすぐに戻ることができる。そしてもしスタートアップが成功したなら、助教授になりたいという欲求はもはやあまり感じなくなっているだろう。
もしスタートアップをやりたいと思うなら、やってみることだ。スタートアップを始めるのは外からそう見えるほどすごいミステリーでもなんでもない。そのために「ビジネス
」について知っている必要もない。何かユーザが好きになるものを作り、支出を収入より少なくすること。そんなに難しいことかい?
スタートアップが既存の企業に対して持つアドバンテージの一つは、会社を始めるときには差別禁止法が適用されないということだ。たとえば、小さな子供がいるか、近々子供ができそうな女性といっしょにスタートアップを始めるのは気が進まないかもしれない。あなたは採用面接で近く子供を作る予定はありますかと聞くことはできない。信じるかどうかわからないが、アメリカの法律では、知能に基づいて差別することすら禁じられているのだ。しかし会社を始めるに当たって誰と一緒にやるか決めるときには、どんな基準に基づいて差別することもできる。
ハックする方法を学ぶのはビジネススクールよりずっと安くつく。ほとんど自分1人で学べるからだ。Linuxの動くPCとK&Rを1冊手に入れ、近所の15歳の子供から何時間かアドバイスをもらえば、あとは自分でうまくやっていけるだろう。
この系として、最大の企業としての政府にものを売るスタートアップは避ける、というのがある。まあ、政府にテクノロジーを売るというのには多くのチャンスがあるのは確かだが、そういう会社を始めるのは別な人に任せておくことだ。
ドイツで会社を始めた友人が言っていたのだが、ドイツではペーパーワークに気を使う必要があり、それがすごくたくさんあるということだ。これはドイツにスタートアップが少ない理由になっていると思う。
[6]シードステージにおける私たちの評価額は原理的には10万ドルだった。ジュリアンが会社の10%を持っていたからだ。しかしこの数字はすごくミスリーディングだと思う。金はジュリアンが私たちに与えてくれた中で一番小さなものだったからだ。
同じことはあなたの会社を買収したがっている会社についても言える。中にはあなたのアイデアを知るために買収したい振りをするところだってある。あなたにはどれがそうなのかは決してわからないので、最適なアプローチはまったくオープンであるように見せつつ、技術的に重要な秘密のいくつかを言い忘れるというものだ。
[8] そこが会社にまずい場所であるのと同じくらいに、私はまずい社員だった。私と働く羽目になったみんなにここで謝りたい。
[9] すべてのことをDMV(陸運局)とちょうど逆にやって成功する方法ということで本が書けるかもしれない。
このエッセイの原稿に目を通してくれたトレバー・ブラックウェル、サラ・ハーリン、ジェシカ・リビングストン、ロバート・モリスと、講演に招待してくれたスティーブ・メレンデス、グレゴリー・プライスに感謝する。

 

[ 80] スタートアップを始めない理由が間違っている理由
[引用サイト]  http://www.aoky.net/articles/paul_graham/notnot.htm

私たちはY Combinatorを十分長くやってきたので、成功率について話せるくらいデータがたまった。最初に投資をした2005年夏のグループには8つのスタートアップがあった。現在ではそのうちの少なくとも4つは成功しているようだ。この中の3つはすでに買収されており、Redditは2つの会社、RedditとInfogamiが合併したものだ。3番目のやつについてはまだ買収先を話せない。最後の1つはLooptで、これは非常にうまくいっており、その気があれば10分以内に買収先を見つけられるだろう。
だから最初の夏の創業者たちのうちの半分くらいは、2年もしないで金持ちになったことになる。少なくとも彼らの基準で言えば。(金持ちになってみて学ぶことの1つは、金持ちにも多くのレベルがあるということだ。)
私たちの成功率が50%という高い水準を保つだろうとはまだ言いかねる。第1弾は例外だったのかもしれない。しかし成功率はよく言われている(そしてたぶんでっち上げの)数字である10%よりは高いものになるはずだ。25%は楽に狙えると思う。
そして失敗した創業者達でさえ、そんなにひどい目にあったというわけではない。最初の8つのスタートアップのうちの3つは今では死んでいる。2つのケースでは創業者たちが夏の終わりに他の方面に進むことにしたというだけだ。彼らがこの経験によってトラウマを負ったとは思わない。トラウマ的失敗に一番近いのはKikoだろう。創業者たちはこのスタートアップのために丸一年働き、そしてGoogle Calendarによって叩きつぶされた。しかし彼らも結局はハッピーになれた。彼らのソフトウェアがeBayで25万ドルで売れたのだ。エンジェル投資家たちにお金を返したあとでも、彼らの手元には1年分のサラリーくらいのお金が残った。[1] 彼らはそのあとすぐにもっとエキサイティングな新しいスタートアップを立ち上げた。Justin.TVだ。
したがって、数字はさらに衝撃的なものになる。最初のグループでひどい経験をした者は0%なのだ。すべてのスタートアップの習いとして、彼らにはいいこともあり、悪いこともあったが、彼らの中でそれをキュービクルでの仕事と取り替えようと思う者はいないだろう。そしてこの数字はおそらく例外的なものではない。私たちの長期的な成功率が最終的にどんなものになるにせよ、普通の仕事をしていれば良かったと思う者の割合は0%に近いままだろう。
だから私にとっての大きなミステリーは、どうしてもっと多くの人がスタートアップを始めようとしないのか、ということだ。スタートアップを起こす人のほとんどすべてがそれを普通の仕事よりも好んでおり、かなりの割合の人が金持ちになっているというのに、どうしてみんなやりたいと思わないのだろう? 多くの人は、投資のラウンドごとに私たちの元には何千という応募が来ているのだろうと思っているようだが、実際はほんの数百だ。どうしてもっと多くの人が応募してこないのだろう? そしてスタートアップの世界を見ている人にはスタートアップが狂ったように生まれ出ているように見えているのだろうが、必要なスキルを持った人の数に比べればずっと少ないのだ。プログラマの大多数は、大学を出るとまっすぐキュービクルへと向かい、そしてそこに居続ける。
人々はどうも自分の興味に従って行動しているのではないらしい。いったいどうなっているのだろう? この疑問については、答えられると思う。Y Combinatorはベンチャー投資プロセスの最初の部分に位置しているため、会社を始めたいのか確信を持てない人の心理について、私たちはエキスパートなのだ。
別に確信がないことに悪いことは何もない。スタートアップを始めることを考えているハッカーであって、その溝を跳び越えるのにためらいを感じているなら、あなたは大きな伝統の一部なのだ。ラリーとサーゲイはGoogleを始める前に同じように迷っていたし、ジェリーとファイロもYahooを始める前に同じように迷っていた。実際、最も成功したスタートアップの多くは、自信満々のビジネスガイによってではなく、確信のないハッカーによって始められているのだ。
このことの裏付けになる事実がある。私たちが投資した最も成功したスタートアップの人たちは、応募を決めたのが最後の最後の瞬間だったと後になって話してくれた。締め切りのほんの1時間前に決めたという人さえいる。
確信のなさに対処する方法は、その不安をコンポーネントへと分解することだ。何かをするのに気が進まない人の多くは、8つくらいの異なった理由が頭の中に入り交じっていて、どれが一番大きな要因なのか自分でもわかりかねているものだ。その中にはもっともな理由もあれば、実体のない理由もある。しかしそれぞれの要因の相対的な割合が分らなければ、確信がないことが全体として大方もっともなことなのか、それとも大方実体のない不安なのかも分らない。
だからスタートアップを始めるのを躊躇させる要因をすべてリストアップし、どれが本質的なものなのか説明することにしよう。そうすれば創業者になりたいと思う人が自分の気持ちを確かめるためのチェックリストとして使えるだろう。
私の狙いがあなた方に自信をつけさせることであるのは認めよう。しかしこれがよくある自信をつけるエクササイズと違っている点が2つある。1つは私には正直であろうとする動機があるということだ。自信をつけ
させるビジネスをしている人の多くは、あなたがいかにすばらしいかを教えてくれる彼らの書いた本の代金やセミナー参加費をあなたが払った時点で目的を達している。一方、スタートアップを始めるべきでない人たちにスタートアップを始めるように私が勧めるなら、私は自分の生活を悪化させることになる。あまりに多くの人にY Combinatorに応募するよう励ますなら、彼らの応募すべてに目を通す私の仕事が単に増えるだけだ。
もう一つ違っている点は私の姿勢だ。ポジティブになろうとするかわりにネガティブになろうと思っている。私は「やってみようよ、君ならきっとできるさ」とは言わない。私はあなたがやろうとしない理由のすべてについて考え、その多くは??全部ではない??無視できる理由を説明する。まず誰もが生まれながらにして持っている理由から始めよう。
多くの人が、自分はスタートアップを始めるには若すぎると考える。それが正しい場合も多い。世界的に見て中央値は27歳くらいだ。だから1/3くらいの人は本当に若すぎると言えるだろう。
若すぎるとはどういうことだろう? Y Combinatorで目指していたことの1つは、スタートアップ創業者の年齢の下限を見出すということだった。私たちには
いつも投資家たちが保守的にすぎるように思えた。彼らは大学院生や学部学生に投資すべきときでも、大学教授に投資したがった。
この範囲を押し広げていく過程で私たちが見出したのは、限界がどこにあるかということではなく、限界が曖昧だということだ。限界は16あたりかもしれない。私たちが18より下の人たちを対象としないのは、彼らが法的に契約を結べないからだ。私たちがこれまでに投資した中で最も成功した創業者であるサム・アルトマンは、当時19歳だった。
しかしサム・アルトマンは例外的なデータポイントかもしれない。彼は19のときでも、内面的には40くらいに見えた。一方で19歳であっても内面的には12くらいの人たちだっているのだ。
ある年齢を超えた人を指す「成人」という言葉があるのには理由がある。人が越える境界というものがあるのだ。それは伝統的に21に固定されているが、実際には異なる人は異なった年齢でこの境界を越える。そしてこの境界を越えていれば、年齢に関わりなく、スタートアップを始められる年なのだ。
それはどうすれば分るのか? 大人扱いできるか調べられるテストが2つある。実はこれらのテストの存在に私が気付いたのは、サム・アルトマンに会ってからだ。彼に対していると、何かもっと年長の人と話しているような気がしていた。後になって、自分は何を基準にそう思ったのか疑問を持った。彼が年長に思えたのは何によってなのだろう?
大人扱いのためのテストの1つは、まだ子供のすっぽかしの名残を持っているか見るということだ。小さな子供は、何か難しいことをやるように言われたとき、泣いて「できないよ
」と言えば大人はたいてい免除してくれる。子供には魔法のボタンがあって、「ぼくは子供なんだ」と言ってそのボタンを押せば、ほとんどの難しい状況から開放してもらえる。しかし成人の場合、すっぽかしは許されない。もちろん相変わらずやる人もいるが、そうすると無慈悲に切り捨てられることになる。
成人かどうか言うためのもう一つの方法は、挑戦に対してどう反応するか見ることだ。まだ成人にならない人は、大人に挑戦されると、彼らの支配を認めるような仕方で反応する。大人が
「ばかげたアイデアだ」と言うなら、子供は脚の間にしっぽを挟んで引き下がるか、あるいは反抗する。しかし反抗は従属と同様、下位にあることを意味するのだ。「ばかげたアイデアだ
」に対する大人の反応は、相手の目を見て、「そうですか? どうしてそう思われるんです?」と聞くことだ。
もちろん挑戦に対して子供じみた反応をする大人はたくさんいる。あまりお目にかからないのは、挑戦に対して大人のように反応する子供だ。そういう人を見つけたなら、その人は年齢に関係なく大人なのだ。
私は以前、スタートアップ創業者は少なくとも23であるべきだと書いたことがある。そして自分の会社を始める前に何年か別な会社で働くべきだと。今ではもうそうは思っていない。私が考えを変えたのは、私たちが投資したスタートアップの例を見てのことだ。
今でも21よりは23の方がいいとは思っている。しかし21歳の人が経験を積む一番いい方法は、スタートアップを始めることなのだ。だから、逆説的ではあるが、スタートアップを始めるための十分な経験がないなら、スタートアップを始めるべきなのだ。これは普通の職に就くよりも、はるかに効果的に未経験を治療してくれる。普通の職というのは、実際にはスタートアップを始めにくくしてしまうかもしれない。働き場所としてのオフィスと、どんなソフトウェアを書くか指示するプロダクトマネージャを必要とする飼い慣らされた動物にあなたを変えてしまうことによって。
このことを私に確信させたのはKikoの創業者たちだった。彼らは大学を出てすぐにスタートアップを始めた。彼らは経験のなさからたくさんの誤りを犯した。しかし1年後に私たちが彼らの2番目のスタートアップに投資する頃には、彼らはものすごく手強い連中になっていた。彼らは間違いなく飼い慣らされた動物ではなかった。彼らが働いていたのがMicrosoftだったなら、あるいはたとえGoogleであったとしても、彼らがこれほど大きく成長することはなかったと思う。彼らはいまだ自信のない下級プログラマでいたことだろう。
だから今では、私は大学を出たらすぐスタートアップを始めるようにアドバイスしている。リスクを取るのに若いときほどいい時はない。確かに失敗するかもしれない。しかし失敗した場合でさえ、就職するよりも早く、究極の目的にたどり着くことができるだろう。
こう言うのは少し懸念を感じないわけではない。実質的にこれは、私たちの費用持ちで失敗を通じて学ぶようにと勧めるようなものだからだ。しかしこれは真実なのだ。
スタートアップ創業者として成功するためには相当な意志が必要だ。これはたぶん成功を占う一番いい指標になると思う。
起業をやってのけられるだけの意志のない人もいる。これは私には確信を持って言うのが難しいのだが、それは私自身ははっきりと意志を持っており、そうでない人の頭の中がどうなっているのかわからないからだ。しかしそういう人がいるだろうことはわかる。
ハッカーの多くは自分の意志を過小評価していると思う。スタートアップの運営に慣れるにつれ、目に見えて意志が強くなっていく人を多く見てきた。私たちが投資した何人かは、最初は200万ドルで買収してもらえたら大喜びというようだったのが、今では世界支配に狙いを定めている。
自分が十分な意志を持っているかはどうすればわかるのだろう? ラリーとサーゲイでさえ、最初会社を始めることに迷っていたというのに? これは推測だが、自分のプロジェクトに取り組むことに十分強い動機づけを感じるかどうかがテストになると思う。ラリーとサーゲイは自分たちが会社を始めたいのか確信がなかったかもしれないが、彼らは指導教官の命令におとなしく従うだけのリサーチアシスタントではなかった。そして彼らは自分のプロジェクトを始めたのだ。
スタートアップの創業者として成功するためには、それなりに頭がいい必要があるかもしれない。しかしそれについて懸念しているようなら、あなたはたぶん間違っている。スタートアップを始められるほど頭が良くないかもしれないと心配しているくらいなら、あなたはたぶん十分頭がいいのだ。
何にせよ、スタートアップを始めるのはそんなに知性を要求されることではない。スタートアップの種類によっては必要となる場合もある。Mathematicaを作るつもりなら、数学で秀でている必要があるだろう。しかし多くの会社はもっと日常的なことをやっており、そこで決定的要因になるのは頭脳ではなく努力だ。シリコンバレーはあなたの見方を歪めてしまうかもしれない。シリコンバレーには頭の良さに対するカルトがあって、頭の良くない人たちでさえ、少なくとも頭が良さそうに振る舞っている。もし金持ちになるには高い知性が必要だと考えているなら、ニューヨークやロサンゼルス
技術的に難しい何かをするスタートアップをやれるほど頭が良くないと思っているなら、エンタープライズソフトウェアを作ればいい。エンタープライズソフトウェア企業というのはテクノロジー企業ではないのだ。彼らはセールス企業であり、セールスでは努力がものを言うのだ。
これもまた、係数が0であるべき変数だ。スタートアップを始めるのにビジネスについて何か知っている必要はない。最初のうちは製品に集中すべきなのだ。このフェーズにおいてあなたが知っている必要があるのは、人々が欲しがるものをどうやって作るかということだ。それに成功したなら、どうすればそこから金を引き出せるか考える必要があるが、それは簡単なことであり、その場になればどうにかできる。
私は創業者たちに、ただ優れたものを作り、金儲けのことはあまり心配するなと、かなりうるさく言っている。そしてあらゆる経験的な証拠が、そのことを示している。人気になるものを作るスタートアップの100%が、そこからどうにかして金を稼ぎ出しているのだ。そして買収者たちが私に個人的に言っているのは、彼らがスタートアップを買うのはその収入のためではなく、戦略的価値のためだということだ。それはつまり、彼らが人々の欲しがるものを作っているから、ということだ。買収者たちはこの法則が彼ら自身にも当てはまることを知っている。ユーザがあなたを気に入っているなら、あなたはどうにかしてそこからお金を得ることができる。そしてユーザがあなたを気に入っていないなら、世界で最も巧みなビジネスモデルだろうと、救いにはならない。
ではどうしてこう多くの人が反論しているのだろう? 1つの理由は、20歳の連中が金にならないクールなものを作って金持ちになるという考えが彼らには気に入らないのだと思う。そんなことが可能であって欲しくないのだ。しかしどれほど可能であるかは、どれほどそうあって欲しいと思うかに依存するわけではない。
感化されやすい若いハッカーを破滅に導く無責任な笛吹男のように言われることをずっと煩わしく思っていたが、今ではそのような議論が起きること自体いいアイデアであることの徴だと思うようになった。
もっとも価値ある真実は、多くの人が信じないような真実なのだ。過小評価されている株のようなものだ。そういうアイデアで始めればその領域全体が手に入る。だから自分ではいいアイデアだと分っているがみんな認めないようなものを見つけたなら、単に彼らの反対を無視するというだけでなく、その方向に積極的に進むべきなのだ。今の場合、それは人気になるだろうが金を得られそうにないアイデアを探すということだ。
あなたが人気になるものを作ったのに私たちがそこから金を得る方法を見つけられないなんてことにはならないよ。賭けてもいい。
共同創業者がいないというのは本当の問題だ。スタートアップを1人で持ちこたえるというのは難しすぎる。私たちは他の投資家たちと多くの点で違った考えを持っているが、この点についてはみんな考えが同じだ。投資家は誰であれ例外なく、共同創業者がいない場合よりいる場合の方が投資してくれる可能性が高い。
私たちは単独の創業者2人に投資したが、どちらの場合も優先度第一のことは共同創業者を見つけることだとアドバイスした。彼らはどちらもそのアドバイスに従った。しかし私たちは彼らが応募する前に共同創業者を見つけておいてくれる方がうれしい。投資を受けたばかりのプロジェクトで共同創業者を見つけるのはそんなに難しくない。それがすごく難しいときにサインするくらいに十分コミットしている共同創業者が望ましいのだ。
共同創業者がいない場合、どうすればいいのだろう? 見つけることだ。これは他の何よりも重要なことだ。あなたが住んでいるところには、一緒にスタートアップを始めようという人が1人もいないというなら、そういう人がいる場所に移ることだ。あなたの今のアイデアでは一緒にやろうという人がいないなら、アイデアを変えることだ。
もし在学中なら、潜在的な共同創業者に囲まれていることになる。大学を出て何年かたつと、探すのはずっと難しくなる。選べる対象が少なくなるだけでなく、彼らの多くは職を持ち、支えなければならない家族さえいるかもしれない。だからスタートアップについてよく話していたような友達がいるなら、極力連絡を絶やさないようにすることだ。彼らが夢を生き続けさせる助けになるかもしれない。
ユーザグループやカンファレンスのような場所で共同創業者となる人に出会えるかもしれないが、私はあまり楽観的ではない。その人を共同創業者にしたいかどうかは、いっしょに仕事してみないと分らないからだ。[2]
このことの本当の教訓はどうやって共同創業者を見つけるかということではなく、スタートアップは共同創業者となるべき人が周りにたくさんいる若いときに始めるべきだということだ。
ある意味で、いいアイデアを持っていないのは問題ではない。それというのも、スタートアップの多くは、どのみちアイデアを途中で変えるものだからだ。Y Combinatorの平均的なスタートアップは、最初の3ヶ月が終わるまでに、アイデアの70%が新しいものになっている。場合によっては100%新しくなっていることもある。
実際、創業者自身が初期のアイデアよりも重要であることを私たちは確信しており、今度の投資サイクルでは新しいことを試みようとしている。全然アイデアのない人にも応募させようと思っているのだ。何をするつもりなのか問う応募用紙に、
「アイデアはない」と書いて済ませてもいい。あなたが非常に優れていると思えば、私たちはどのみち受け入れるのだ。私たちはきっと、あなたと一緒に腰を据えて見込みのあるプロジェクトを何か考え出せると思う。
実際には、これは私たちがすでにやっていることを成文化しただけだ。私たちはアイデアには小さな重みしか置いていない。私たちは主に礼儀として聞いているに過ぎない。応募用紙の質問の中で私たちが本当に気にかけているのは、その人がこれまでにどんなクールなものを作っているかということだ。見込みのあるスタートアップのバージョン1を作っているならすごくいいが、私たちに関心があるのは、その人がものを作ることに優れているかどうかということだ。人気のあるオープンソースプロジェクトでリードデベロッパーをしているというのも同じくらいにポイントが高い。
Y Combinatorから投資を受けるのであればそれで問題は解決するわけだが、一般的にはどうだろう? 別な意味では、アイデアを持っていないというのは問題になる。アイデアなしにスタートアップを始めたなら、次にすべきことは何
あなたのためにスタートアップのアイデアを得るための簡単なレシピをお教えしよう。あなた自身の生活に欠けているものを何か見つけ、そのニーズを満たすものを提供すればいいのだ??それがどんなに特殊なものに見えても構わない。スティーブ・ウォズニアックは自分でコンピュータを作ったが、そんなものを欲しがる人が他にもたくさんいると誰にわかっただろう? 狭いが真性のニーズというのは広いが仮想的なニーズよりも、出発点としてはいいのだ。だからあなたの問題が土曜の夜だというのにデートの相手がいないということ
なのだとしても、ソフトウェアを作ってそれを解消できる方法を見つけたなら、何かに行き当たったことになる。同じ問題を持つ人なら大勢いるからだ。
多くの人は増え続けるスタートアップを目にして、「こんなの続くわけない」と思う。彼らが暗に仮定しているのは、存在しうるスタートアップの数には限界があるということだ。しかしこれは誤りだ。社員1000人の会社で給料をもらって働ける人の数にそういう限界があると主張する人はいない。それならなぜ、5人の会社を所有して働く人の数に限界があると考えなければならないのか? [3]
働いている人のほとんどすべてが、何らかの必要を満たしている。会社を小さなユニットに分けたところで、この必要がなくなるわけではない。既存の必要は、少数の巨大で階層的な組織よりも、スタートアップのネットワークの方が効率的に満たすことができるだろう。しかしそれは機会が少なくなることを意味するわけではない。現在のニーズを満たすことは、より多くのニーズを生み出すことになるからだ。これは確かに個人に当てはまるし、それで何かまずいことがあるわけでもない。建物全体が年中春のように温められているような、中世の王侯であれば女々しい贅沢だと考えたようなことを、私たちは当たり前のこととして享受している。そしてものごとがうまく進むなら、私たちの子孫は私たちが驚くような贅沢を当然のこととして享受しているだろう。物質的な富に絶対的な基準はないのだ。ヘルスケアというのもその一つであり、それだけで1個のブラックホールを作り出す。今後当面は、人々はさらに多くの富を求め続けるだろう。だから企業に求められる仕事の量に上限はなく、スタートアップでは殊にそうなのだ。
通常、余地がないという俗説は直接的には語られず、「GoogleやMicrosoftやYahooが買えるスタートアップがそうたくさんあるわけはない」というような言い方で暗に示される。そうかもしれないが、買収者のリストはこれよりもずっと長い。そして他の買収者はともかくとして、Googleは愚かではない。大企業がスタートアップを買うのは、それが何か価値あるものを作っているからだ。個人が求める富の量に上限があると思わないのに、どうして企業が買える価値あるスタートアップの数に上限があると考えるのだろう? 1つの買収者が飲み下せるスタートアップの数には実際的な上限があるかもしれないが、それが価値あるものなら、即座の支払いの見返りに創業者たちは喜んで上昇過程にあるものを譲り渡し、買収者
これは本当の問題だ。私は家族を持っている人にはスタートアップを始めることを勧めない。それがまずいアイデアだからではなく、やるように勧める責任を負いたくないということだ。22歳の相手にスタートアップを始めるように勧める責任なら喜んで負う。彼らが失敗したらどうするか? 彼らはそこから多くを学び、職が必要であれば依然としてMicrosoftの職は待っていてくれる。しかし私にはおっかさんたちを怒らせる覚悟はない。
あなたにできることとしては、家族があってスタートアップを始めたいなら、コンサルティングビジネスを始めて、徐々に製品ビジネスへと変えていくという方法がある。経験的に言って、その切り替えをやってのけられる可能性はとても低い。そういうやり方では、けっしてGoogleは作れないのだ。しかし少なくとも収入が途絶えることはない。
リスクを減らすもう一つの方法は、自分でスタートアップを起こす代りに、既存のスタートアップに参加することだ。スタートアップが採用する最初の社員の1人になるというのは、創業者の立場にかなり近い。いい意味でも、悪い意味でも。大まかに言って、社員ナンバーnの人は1/n^2くらい創業者なのだ。
これは私がスタートアップを始めない言い訳だ。スタートアップはストレスに満ちている。金に困ってないのに、どうしてそんなことするんだ? 「連続起業家」1人につき、
「また会社を始めるかって? バカ言っちゃいけない!」というまともな人間がたぶん20人くらいいるはずだ。
私は新しいスタートアップを始めそうになったことが2度ほどあるが、いずれの場合も自分の人生の4年間をめちゃめちゃな苦労で埋めたくないがために引っ込めた。私はこのビジネスのことなら十分よく知っている。生半可ではやれないのだ。いいスタートアップ創業者を危険にするのは、際限のない苦労をよろこんで耐えるということだ。
しかし引退というのにもちょっとした問題がある。多くの人と同様、私は仕事するのが好きだ。そして金持ちになったときに発見するたくさんの奇妙な問題の1つに、いっしょに働いてみたいと思うような興味深い人たちの多くは金持ちでないということがある。彼らは生活のためにどこかで働く必要がある。それはつまり、彼らと同僚になりたかったら、あなたも生活のための仕事をする必要があるということだ。たとえあなたには金を稼ぐ必要がなかったとしても。実のところ、これが連続起業家たちを駆り立てているものじゃないかと思う。
そしてこれは私がY Combinatorでの仕事をすごく好きな理由だ。この仕事は好きな人たちと興味深い仕事をいっしょにやる口実を与えてくれるのだ。
これは私が20代の頃にスタートアップを始めない理由になっていたことだ。この年代の人の多くと同様、私は何よりも自由に価値を置いていた。私は何であれ数ヶ月以上のコミットメントを要することをするのは気が進まなかった。そしてスタートアップのように生活を完全に奪われてしまうようなことをしたくはなかった。それはいい。世界を旅行して回ったり、バンドで演奏したりして時間を過ごすのが望みなら、それはまったくもって当を得た会社を始めない理由になる。
成功するスタートアップを始めるなら、少なくとも3年か4年は取られることになる。(失敗すれば、ずっと早くて済む。) だからそれくらいのスケールでコミットする覚悟がないなら始めるべきではない。しかし注意して欲しいのは、定職についたなら、おそらくスタートアップに取られるのと同じくらい長くそこにいることになるということだ。そして思っていたよりも自由になる時間が少ないことに気付くだろう。だからあなたがもしIDバッジをつけてオリエンテーションに行く覚悟があるなら、スタートアップを始める準備だってできていると言えるかもしれない。
生活に構造を必要とする人もいるのだと聞いたことがある。これは何をするか人に言ってもらう必要があるというのを聞こえよく言っているだけのように思える。そういう人たちはきっといるのだろう。経験的な証拠であれば、軍隊に、カルト、そ
あなたがそういった人たちの1人であるなら、スタートアップを始めるべきではない。実際のところ、スタートアップで働くべきでもない。いいスタートアップでは、何をするか指示されるようなことはあまりない。CEOという肩書きを持つ人間が1人いるにしても、社員数が12人くらいになるまでは、他の人に指図する人間はいるべきではない。そんなのは非効率すぎる。それぞれの人はただ必要なことを、言われるまでもなくやるべきなのだ。
それがカオスを作り出すレシピのように聞こえるなら、サッカーチームのことを考えてみるといい。11人が非常に複雑な仕方で一緒に働き、非常の場合でもなければ、誰も他の人にどうしろと言ったりはしない。レポーターがデビッド・ベッカムに、レアル・マドリードでは選手の出身国が8つにも分かれていて、言葉が問題になることはないのかと聞いたことがあった。それに対してベッカムは、言葉が問題になることはなく、みんな非常に優れているので、話す必要がないのだと答えていた。彼らは各自がそれぞれただしかるべきことをしているのだ。
自分がスタートアップを始められるほど十分独立心が強いかどうかはどうしたら分るだろう? もし独立心がないかのように言われるとムカつくなら、あなたにはたぶん十分な独立心がある。
不確かなことを嫌うためにスタートアップを始めるのを先延ばしにする人たちもいると思う。Microsoftに働きに行くなら、この先何年かのことを非常に明確に予見することができる。明確すぎるくらいだ。実際、スタートアップを始めるなら、どんなことだって起こりうる。
不確かさが問題だというなら、私がそれを解決してあげよう。スタートアップを始めたなら、それはたぶん失敗する。まじめな話、これは起業の体験全体について考える悪くない方法だ。最高を望みながら最悪を予期しておくのだ。うまくいかなくとも、少なくとも興味深い体験ができる。そしてうまくいけば、たぶん金持ちになる。
あなたのスタートアップがこけても、あなたが真剣に努力している限りは誰も批難はしないだろう。採用者が起業の失敗をマイナスと見ていた時期もあったが、今は違う。私は大企業のマネージャたちに聞いてみたが、彼らはみな起業を試みて失敗した人の方を、同じ時間を大企業で過ごしていた人よりも雇いたいと言っていた。
投資家達も、失敗の理由が怠慢や救いがたい間抜けさというのでもない限り、マイナスとは考えない。よその国(たとえばヨーロッパ)では、起業の失敗が大きな汚点として捉えられると聞くが、ここでは違う。アメリカでは、会社というのもまた、他のあらゆるものと同様、使い捨て可能なのだ。
1年か2年社会に出ていた人が、大学を出たての人よりもいい創業者になる理由の1つに、彼らが自分で何を嫌うかわかっているということがある。スタートアップが失敗したら仕事に就く必要があり、そしてそれがどんなに嫌なものなのかを彼らは知っているのだ。
大学の時夏休みに仕事していたので、仕事がどんなものかくらい分っていると思うかもしれない。しかしあなたは恐らく分っていない。テクノロジー企業における夏の仕事というのは本当の仕事ではないのだ。夏の仕事としてウェイターをしたというなら、それは本当の仕事だ。自分の担当分のことをする必要がある。しかしソフトウェア会社が夏に学生を雇うのは、安価な労働力としてではない。彼らは卒業後に採用することを思ってそうしているのだ。だからあなたが何か作れば彼らは喜ぶだろうが、別にそれを期待しているわけではない。
それが卒業して本当の仕事につくと変わる。あなたは生活費を稼ぐ必要がある。そして大企業のしていることのほとんどは退屈なことなので、あなたは退屈なことをやることになる。大学でやっていたことに比べれば簡単なことだが、しかし退屈だ。最初のうちは、簡単なことをやって金がもらえるというのは、大学で金を払って難しいことをやっていたことから考えるとうまい話に思えるかもしれない。しかし何ヶ月かするとそういう気持ちは消える。そしてそのうちくだらないことをやるのにウンザリするようになる。たとえそれが簡単でいい金になったとしても。
それが最悪のことというわけではない。本当に嫌なのは、正規の仕事では所定の時間そこにいることを期待されるということだ。Googleだろうと、これには煩わされる。そしてこれが意味するのは、正規の仕事に就いている人が誰でも言ってくれるだろうが、どんな仕事もする気にならないような時であっても、会社に行ってディスプレイの前に座り、仕事している振りをしなければならないということだ。多くのハッカーがそうであるように、仕事が好きな人には、これは拷問ともいえることだ。
スタートアップでは、このようなことは省略できる。スタートアップの多くには勤務時間という概念はない。仕事と生活はただ混ざり合っている。これのいい点は、仕事場に生活を持ち込んでも誰も気にかけないということだ。スタートアップでは、ほとんどの時間、どんなことをしていることもできる。あなたが創業者なら、あなたがほとんどの時間にやりたいと思うことは仕事だろう。しかし仕事している振りをすることが必要になることは決してない。
大企業では、オフィスで居眠りするのは職業人らしくないと見なされる。しかしスタートアップをやっていて日中に居眠りするなら、共同創業者たちは単に疲れてるんだろうと思うだけだ。
おそらくスタートアップ創業者になりえた人のかなりの数が、両親に言われて思い留まっているだろうと思う。両親の言うことを聞くべきでないと言っているのではない。家族にはそれぞれ自分のやり方を持つ権利があるし、だいたいそれに反対しようなんて何様なんだろう? しかし安全なキャリアというのは、おそらくあなたの両親が本当にあなたに望んでいることではない。その理由を2つほどお話ししよう。
1つには、親というのは、子供に対しては、自分に対してよりも保守的になりがちなものなのだ。これは実際合理的な態度だ。親は子供の幸運よりは悪運をより多く共有することになる。多くの親はそのことを気にかけない。それは彼らの仕事の一部なのだ。しかしこのことは彼らを過剰に保守的にしがちだ。そして保守的に過ぎるというのも間違いなのだ。ほとんどあらゆることについて、報酬はリスクに比例する。だから子供をリスクから遠ざけるというのは、親はそう自覚していなくとも、報酬からも遠ざけることになるのだ。そのことが分かれば、彼らもあなたがもっとリスクを取ることを望むだろう。
親が間違っているもう1つの理由は、将軍と同様、彼らはいつも昔の戦いを戦っているということだ。彼らがあなたに医者になって欲しいのは、単に病気の人たちを助けて欲しいと思っているのではなく、医者というのが富と名声を伴うキャリアだからだ。[4] しかし彼らの意見が形成された頃に比べると、医者というのはそれほど富にもならなければ名声にもならない。私が子供だった70年代には、医者はみんななりたいと思うものだった。医者に、ベンツ450SLに、テニスは黄金の三角形だった。今では3つともすごく時代遅れの感がある。
あなたに医者になってもらいたいと思っている親は、ものごとがどれほど変わっているか認識していないだけかもしれない。あなたが医者でなくスティーブ・ジョブズにしかなれなかったら、彼らはがっかりするだろうか? だからあなたがどうすべきかについての親の意見は、機能要求のように扱うことだ。たとえあなたの唯一の目標が両親を喜ばすことであったとしても、そのための方法は彼らが求めるものをそのまま与えることではない。そうではなく、彼らがそれを求めるのはなぜかを考え、彼らが本当に求めるものを与えることのできる、もっといい方法を探ることだ。
最後に、普通の職に就くおそらくもっとも強力な理由として、それがデフォルトだということがある。デフォルトというのはものすごく強力なものであり、それは意識的に選択することなく選択されるからだ。
犯罪者を別にすれば、ほとんどの人は金が必要なら職に就くものだと思っている。実際には、この伝統には100年程度の歴史しかない。それ以前には、生活のためのデフォルトの方法は、農業をすることだった。ほんの100年くらいしか歴史のないものを原理のように扱うのは間違っている。歴史の基準で言えば、これは短期間で変わっていることなのだ。
私たちが今目にしているそのような変化は他にもある。私は経済史の本をたくさん読んでるし、スタートアップの世界のことなら良く理解しているつもりだが、私たちが見ているのは農業から工業への移行と同じくらい大きな変化の始まりであるように思える。
農業から工業への移行の初期 (ヨーロッパでは1000年ころ) に居合わせていたなら、富を得ようと都市に向かうことはほとんどの人に狂ったことと思えただろう。農奴は土地から離れることを許されていなかったが、都市へと逃げ出すのはそんなに難しいことではなかったはずだ。村の境界をパトロールしている番人がいたわけではない。土地を離れることから農奴の多くを引き留めていたのは、それがものすごくリスクの高いことに見えたということだ。自分の区画を離れるって? 人生の間ずっといっしょに過ごした人たちから離れて? 見も知らぬ3000か4000という人の住む巨大な都市で暮すために? どうやって生活するつもり? どうやって食べ物を
彼らには恐ろしいことに見えたことだろうが、自分の才覚で生活するというのは現在の我々にはデフォルトになっている。だからスタートアップを始めるのがリスキーに見えるなら、私たちが今している生活が祖先たちにどれくらいリスキーに見えたかを考えてみるといい。このことが一番よく分っているのは、あなたを古いモデルに縛り付けておこうとしている人たちだ。あなたが社員として働きに来るべきだとラリーやサーゲイにどうして言えるのだろう? 彼らは自分では職についたこともないのに!
中世の小作農のことを考えると、どうして彼らがそんな身分を我慢していたのか不思議になる。一生涯同じ土地で何かが良くなる見込みもなく生きていくというのは、どんなにか気がふさぐことだったろう? すべて領主や司祭の言うがままで、利益はすべて取り上げられ、彼らを主人として認めなければならない。いつか、私たちが普通の仕事と思っていることが同じような目で見られるようになったとしても、私は驚かない。人間味のないオフィスビルにあるキュービクルへと毎日通勤
し、ボスと認めなければならない相手の言う通りにしなければならないというのは、どんなに気がふさぐことだろう? その人間はあなたを自分のオフィスに呼んで、「かけたまえ
するとあなたは言われたとおり腰を下ろすのだ! ソフトウェアをユーザにリリースするときに許可を求めなきゃならないことを想像してほしい。日曜の午後に、週末が終わって明日また朝起きて働きに行かなければならないことで陰鬱になっているところを想像してほしい。どうしてみんなそんなことに我慢できるんだろう?
私たちは農業から工業へのシフトに匹敵するくらい大きな変化の発端にいるのかもしれないと考えるのはエキサイティングなことだ。それが私がスタートアップを気にかける理由だ。スタートアップが興味深いのは、それがたくさんの金を得られる方法だというだけではない。金を儲けられるにしても、他の方法、たとえば株の売買なんかにはまったく興味を感じない。それが面白いのはせいぜいパズルが面白いというのと同じような意味においてだ。スタートアップにはもっと
すごいことがある。スタートアップは、富の作られる方法が変わる希なる歴史的な転換を体現しているかもしれないのだ。
究極的にはそれが、私たちをY Combinatorの仕事へと駆り立てたものだ。スタートアップにかかわるのをやめずに済むという限りにおいて、私たちも金を作りたいとは思うが、しかし金が主な目的ではない。人類の歴史において大きな経済的シフトは数えるほどしか起きていない。それが起きるのを早めてやるというのは、すごいハックだとは思わないか?
[1] 損をしたのは私たちだけだ。エンジェルたちは転換社債を持っており、オークションの売り上げに対して優先的な権利があった。Y Combinatorは1ドルに対して38セントしか得られなかった。
[2] このための最良の組織はたぶんオープンソースプロジェクトだが、オープンソースプロジェクトでは顔を合わせてのミーティングはあまり行われない。顔を合わせるオープンソースプロジェクトというのはやってみる価値があるかもしれない。
[4] 思考実験: 医者が同じ仕事をしているが、貧乏な浮浪者として暮すとしたら、親たちは依然子供を医者にしたいと思うだろうか?
原稿に目を通してくれたトレバー・ブラックウェル、ジェシカ・リビングストン、ロバート・モリス、PowerPointキラーとなるだろうWebベースの製品をまだローンチされてないにも関わらず使わせてくれたZenterの創業者たち、そして講演に招待してくれたBerkeley CSUAのミンヘイ・ラクに感謝する。

 

[ 81] Amazon.co.jp: RSSマーケティング・ガイド 動き始めたWeb2.0ビジネス: 本: 塚田耕司,滝日伴則,田中 弦,楳田 隆,片岡俊行,渡辺 聡
[引用サイト]  http://www.amazon.co.jp/RSSa??a??a?±a??a?£a?3a?°a?≫a?¬a??a??-a??a??a§?a??a??Web2-0a??a?,a??a?1-a!?c?°ea?。、/dp/484432215X

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ブログとともに普及し、ブログとともに新しいマーケティングチャンネル、マーケティング手法として注目を浴びている「RSS」。Web、メールと並び「第三のメディア」と称されるこのRSSは、企業のマーケティング活動にどのような影響をもたらすのか。本書では、「広告」「検索」「メール」「口コミ」「モバイル」など既存のネットマーケティング手法と比較しながら、RSSに潜むビジネスチャンスを探った。さらにWeb 2.0時代のビジネスチャンスにまで迫る。RSSビジネスのリーダー6人による書き下ろしWebビジネスガイド。
あなたのレビューがサイトに載ります。 ※ カスタマーレビューは他のお客様により書かれたものです。ご購入の際はお客様ご自身の最終判断でご利用ください。
この本はRSSが何かをわかった方が読む本です。
実践的なRSSと使った商売のこともわかります。

多少の知識がないと読んでいておもしろくないかも
しれませんね^^

本書では今行なわれているRSS戦略とWeb2.0
のビジネス最前線を垣間見れます。
Web2.0は「知の集積」、「検索革命」、「ロングテール革命」、そして「RSS」である。この本を読みながら難解用語は「誰でもわかるパソコン・IT・ネット用語辞典」を活用しながら読み解いて一応はよくわかった。
この「RSS」はデジタル放送が始まり、それと併合するとどのような未来が待っているかがよくわかりWeb2.0を勉強する人にはお勧めの2冊です。

それぞれの筆者が、懇切丁寧に説明してくれてて非常に助かる。これを読んだらRSSまわりの日本およびUSでのトレンドと歴史、今後の可能性、課題くらいはさらーっと洗えたと思う。

が、難点は文章が非常に固くて、教科書みたいな読み味なことと。インターネットでのマーケティングに関係ない人、インターネット業界にいない人、ごくごく普通のインターネットユーザーには正直辛いだろう。
逆に、少しでもインターネットと、それ上のマーケティングでお金稼ごうと思っている人は、知っておいて損はないトレンドなんだなぁということが、この本を読むと納得できます。そういう人は絶対に読んでおいたほうがいいのではないでしょうか?

文章の固さと一般人向けでないところで、星を一個ひいておいた。
RSSリーダーで毎日情報収集していながら、マーケティングに具体的に生かす方法へとは思いがいたりませんでした。まさに目からうろこ!
ちょっと値段が高いのが残念かな。
RSSを使ったマーケティングについて
丁寧かつ簡潔
冷静に手際良くまとめられた
なかなか素晴らしいガイドブックです。

これだけ整然と内容をまとめられるということは
この分野の立ち上げ準備はほぼ終わっていて
後は普及を待つだけの段階にあることを示しているのでしょう。

RSSを使えばどのようなビジネスが考え得るのか、さまざまな切り口から実践的な考察を行っている。

私自身、普段からRSSリーダーを使ってブログやニュースをチェックしており、RSSのトラフィックが急増していることもRSSの利便性も実際に肌で感じている。GoogleやYahoo!も本気でRSS対応を進めている・・・。

ところが、このRSSをどのようにして「お金」に変えればいいのか、その仕組みまでは考えが及ばなかった。これは多くのnetビジネスプランナーたちも同様ではなかろうか?

だが、のんびりしてはいられない! これだけRSSが普及している以上、RSSをビジネスでも活用することを考えていかなければいけない。インターネットを使ったビジネスに関わる人間なら、誰しもこの急速なRSS化の流れには焦りを感じているはずだ。

本書は、RSSを使った広告ビジネスやマーケティングについて、各ジャンルのプロたちがデータや実例をもとに解説している。RSS検索、RSS広告といったトピックはもちろん、企業のWebサイトをどう変えていけばいいか、また、メールマーケティングとRSSマーケティングの棲み分けなど、気になる話題ばかりで付箋紙を貼りまくりながら一気に読んだ。とくにRSSのモバイル利用については、類書等からは情報が得られない貴重なネタだと思う。

タイトルにあるように、本書を読むと、Web2.0ビジネスというものが動き始めていることがよく分かる。
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